試しても効果を感じにくいフラッシュバック対処法:『自分に合った方法』を見つけるためのヒント
長年フラッシュバックの症状にお悩みの方の中には、様々な対処法や情報に触れ、試してみたけれども、いまひとつ効果を実感できないと感じていらっしゃる方も少なくないかもしれません。フラッシュバックは非常に個人的でデリケートな問題であり、万人にとって「これが正解」という万能の対処法は存在しないのが実情です。
この記事では、なぜこれまで試した方法では効果を感じにくかったのか、そしてご自身の状況に合った『自分だけの対処法』を見つけるためには、どのような視点やステップが考えられるのかについて、具体的なヒントを交えながらお伝えします。
なぜ『試しても効果を感じにくい』と感じるのでしょうか
フラッシュバックが起きた時の経験は、人それぞれに異なります。過去の出来事の種類、それに対する脳や心の反応、そして現在の生活環境や心身の状態など、様々な要因が複雑に絡み合っています。
一般的なフラッシュバックの対処法は、多くの人にある程度の効果が期待できる基本となるものですが、ご自身の特定のフラッシュバックのメカニズムやトリガー(引き金)、あるいはその時に強く現れる感覚(例えば、視覚的なものなのか、身体的なものなのかなど)によっては、特定の対処法がフィットしにくい場合があります。
また、「効果がない」と感じる背景には、対処法のやり方が合っていないだけでなく、その対処法の「目的」や「タイミング」がご自身の必要と合っていない可能性も考えられます。例えば、強いフラッシュバックが起きている最中に、落ち着いて行うのが難しい方法を試そうとしても、かえって混乱してしまうかもしれません。あるいは、効果を「フラッシュバックが全く起きなくなること」と考えている場合、症状の頻度が減ったり、起きた時の苦痛が和らいだりといった小さな変化に気づきにくくなっている可能性もあります。
大切なのは、効果を感じないことをご自身の「失敗」と捉えるのではなく、「この方法は今の自分には合わないのかもしれない」という次のステップへの情報として受け止める視点です。
『自分に合った方法』を見つけるためのヒント
では、数ある対処法の中から、ご自身のフラッシュバックにより効果的に働きかける可能性のある方法をどのように見つけていけば良いのでしょうか。ここでは、いくつかのステップをご紹介します。
ヒント1:ご自身のフラッシュバックをより深く理解する
まずは、ご自身のフラッシュバックがどのようなものなのか、改めて観察してみることが第一歩となります。
- どのような状況や特定の物事(人、場所、音、匂いなど)がフラッシュバックのトリガーになりやすいでしょうか?
- フラッシュバックが起きる前に、何か特定の心身の状態(疲れている、特定の感情があるなど)はありますか?
- フラッシュバックが起きた時、最も強く感じるのはどのような感覚でしょうか?(鮮明な映像、特定の音、体の痛みや硬直感、強い感情など)
- フラッシュバックが起きた後、ご自身の心や体はどのように変化しますか?
これらの情報を記録していくと、ご自身のフラッシュバックに一定のパターンが見えてくることがあります。このパターンが分かると、どのタイミングで、どのような側面にアプローチするのが効果的かのヒントになります。例えば、特定の身体感覚が強い場合は、グラウンディングや身体に意識を向ける方法が有効かもしれませんし、特定のトリガーが分かれば、それを避ける、あるいはトリガーに触れた際の準備をしておくといった対策が立てやすくなります。
ヒント2:様々なアプローチの『考え方』を知る
フラッシュバックの対処法には、様々なアプローチがあります。それぞれの方法の具体的な手順だけでなく、「なぜその方法が考えられているのか」という背景にある考え方を知ることも参考になります。
- 心を落ち着けるアプローチ: 呼吸法やマインドフルネス瞑想など。これは、フラッシュバックによって引き起こされる心身の興奮や不安を鎮めることを目的とします。
- 現実世界に意識を戻すアプローチ(グラウンディング): 手や足の感覚に意識を向けたり、周囲の物を見たり触ったりするなど。これは、過去の記憶に囚われた意識を「今、ここにいる自分」に戻すことを目的とします。
- 身体感覚へのアプローチ: 安全な身体の感覚に意識を向けたり、軽いタッピングを行ったりなど。これは、フラッシュバックによって活性化する可能性のある過去の出来事に関連する身体の感覚を、安全な形で解放したり、現在安全であることを体に覚えさせたりすることを目的とします。
- 感情や思考へのアプローチ: 日記を書いたり、特定の状況での考え方の癖に気づいたりなど。これは、フラッシュバックに関連する感情や考えを整理し、より建設的なものに変えていくことを目的とします。
これらのアプローチの中から、ご自身のフラッシュバックで強く現れる感覚や、対処したい側面に焦点を当てているものを選んで試してみると良いでしょう。
ヒント3:『試行錯誤』と『記録』を続けることの重要性
「効果を感じにくい」という経験があると、新しい方法を試すことにも億劫になってしまうかもしれません。しかし、ご自身に合った方法を見つけるプロセスは、まさに小さな試行錯誤の積み重ねです。
新しい対処法を試す際は、完璧にこなそうと気負いすぎず、「この方法は自分にどのような影響があるか見てみよう」という軽い気持ちで臨んでみてください。そして、試した方法がその時々でどの程度役に立ったか、あるいは役に立たなかったかを簡単に記録することをお勧めします。
- いつ、どのような状況でフラッシュバックが起きたか
- その時、どの対処法を試したか
- その対処法を行った後、心身の状態はどのように変化したか(例:少し落ち着いた、変化がなかった、かえってつらくなったなど)
この記録は、ご自身のフラッシュバックのパターンを理解するだけでなく、特定の対処法が特定の状況で有効であった、あるいはそうではなかったという貴重なデータになります。これにより、「この状況ではこの方法が良いかもしれない」「あの方法はいまいちだったから、別の方法を試してみよう」といった、より具体的な次のアクションが見えてきます。
専門家のサポートを検討する
自分一人での試行錯誤に限界を感じる場合や、これまでの経験からより専門的なアプローチが必要だと感じる場合は、専門家(精神科医、臨床心理士、カウンセラーなど)に相談することを検討されても良いかもしれません。
専門家は、フラッシュバックのメカニズムや、様々な心理療法(EMDR、認知行動療法、ソマティック・エクスペリエンシングなど)に関する深い知識と経験を持っています。ご自身のフラッシュバックの状況を詳しく話すことで、なぜ特定の対処法が効果を感じにくかったのかを一緒に探り、ご自身の特性や状態に合わせた、より効果的な対処法や治療法を提案・指導してもらうことができます。
「専門家に相談するのは敷居が高い」と感じるお気持ちも理解できます。しかし、誰かに話を聞いてもらうだけでも心が軽くなることがありますし、専門家の視点や知識を得ることは、ご自身に合った対処法を見つける旅において、非常に心強い支えとなります。まずは相談だけでも、と考えてみるのも良いかもしれません。
まとめ
フラッシュバックの対処法は、試してもすぐに効果を感じられないこともあります。しかし、それは方法が間違っているのではなく、もしかしたらご自身のフラッシュバックの特性と、その方法が合致していなかっただけかもしれません。
今回ご紹介したように、ご自身のフラッシュバックを深く理解し、様々なアプローチを知り、根気強く試行錯誤し、必要であれば専門家のサポートを得るというステップは、ご自身に本当に合った、そして効果を実感できる対処法を見つけるための重要なヒントとなるでしょう。
焦らず、ご自身のペースで、一つずつ試してみてください。そして、小さな変化でも見つけたら、ぜひご自身を労ってあげてください。ご自身に合った方法を見つける旅が、フラッシュバックとより穏やかに付き合っていくための一助となることを願っています。